ワイン好 きだから、こんな本が印象に残っている。
「ワイン一杯だけの真実(村上龍)」のあとがき
*写真は「オーパス・ワン」
ワインを飲んで風景が異化してしまうことがある。香りを嗅ぎ、試飲した瞬間、どこか別の場所に運ばれていくよ うな錯覚に陥るときがある。官能的な錯覚だ。
もちろん、そういったワインには何らかの力がなければならない。そういう瞬間をモチーフにし て、ワインを8本選び、短編を書いた。
主人公には、自分自身や人生に違和感を持っている女性を選んだ。つまり普遍的な女性である。
主 人公の女性たちには、拠って立つ場所が用意されていない。生きていくための基盤は常に揺らいでいる。
ただ、彼女たちは、価値観の変動を認 めようとしない古い社会や男たちよりも、知性と勇気がある。
嘘で塗り固められた社会全体を拒否し、グラス一杯のワインの中に真実を見つけ るのだ。
真実は一瞬の中に見え隠れし、必ず甘美で危険なものとして姿を現す。
極上のワインと、現代を生きる女性という組 み合わせが、わたしの中で、自然に調和して、完成度の高い短編集を編むことができたと思う。
*写真は、我が家のワインセラー
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